聖書信仰の見張り人たち

聖書信仰の見張り人たち

ジョイス・マイヤー(1)「イエスは地獄で罪の代価を支払った」

2021.12.29 繁栄の神学 

ジョイス・マイヤーは、米国のテレビ・ラジオ説教者で、ワード・オブ・フェイス運動(繁栄の神学)の教師です。マイヤーの「人生を毎日を楽しむコツ」という番組は、テレビやYoutubeを通して世界中に配信されています。日本でも、ジョイス・マイヤーミニストリージャパンという団体が、書籍の出版や、Youtube、衛星放送による番組配信などを行っています。

ジョイス・マイヤーのメッセージは、わかりやすく、人を励ます内容が多く、女性の視点から語られるので、多くの女性から人気があるようです。しかし、メッセージの内容を吟味すると、繁栄の神学の教師がよく語る間違った教えが数多く含まれています。以下にその一部を紹介します。

「イエスは新生した最初の人間」

ジョイス・マイヤーは、イエスは新生を体験した最初の人となったと語っています。1

ご存じでしょうか? 血の犠牲が受け入れられた瞬間、イエスは新生した最初の人間となったのです。

【原文を読む】

Do you know somthing? The minute that blood sacrifice was accepted, Jesus was the first human that was ever born again.

イエスの血の犠牲が神に受け入れられたというのは確かですが、イエスが新生したとは聖書のどこにも書かれていません。聖書に本当に書かれていることを語り、その直後に誤った教えを混ぜるというのは繁栄の神学の教師によく見られることです。

新生を必要とするのは罪人です。イエスは神であり、罪のない方ですので、新生の必要はありません。エペソ2:1~3ではこう言われています。

1  さて、あなたがたは自分の背きと罪の中に死んでいた者であり、 2  かつては、それらの罪の中にあってこの世の流れに従い、空中の権威を持つ支配者、すなわち、不従順の子らの中に今も働いている霊に従って歩んでいました。  3  私たちもみな、不従順の子らの中にあって、かつては自分の肉の欲のままに生き、肉と心の望むことを行い、ほかの人たちと同じように、生まれながら御怒りを受けるべき子らでした。 

人は、罪の中で死んだ者で、生まれながら御怒りを受けるべき者です。それゆえ、新しく生まれる(新生する)必要があるのです。ヨハネ3:3でこう言われているとおりです。

イエスは答えられた。「まことに、まことに、あなたに言います。人は、新しく生まれなければ、神の国を見ることはできません。」

しかし、イエスは神であり、神の国をもたらされる方なので、当然新しく生まれる必要などありません。また、そのような記述も聖書にありません。

「イエスは神の御子ではなくなった」

ジョイス・マイヤーは、メッセージの中で次のようにも語っています。2

イエスは「わたしの霊をあなたの御手にゆだねます」と言うまでは、自分で自分を救うことができたはずです。しかし、そう言った時点で、イエスはもはや自分では何もできなくなりました。イエスは罪となりました。もはや神の御子ではありませんでした。イエスは罪だったのです。

【原文を読む】

He could have helped himself up until the point where he said “I commend my spirit into your hand.” At that point, he couldn’t do nothing for himself anymore. He had become sin. He was no longer the son of God. He was sin.

この教えは、次の2コリント5:21の教えを曲解したものです。

神は、罪を知らない方を私たちのために罪とされました。それは、私たちがこの方にあって神の義となるためです。

この聖句では、神はイエスを罪とされたとは言っていても、イエスが神の子でなくなったとは言っていません。また、聖書のどこにもそのようなことは書かれていません。イエスは三位一体の神です。神は、とこしえからとこしえまで神です(詩篇90:2)。イエスが一時的にでも神の御子でなくなることはありえないことです。

MEMO

「イエスは地上生涯で神であることをやめた」という教えは、マイヤー独自の教えというよりも、繁栄の神学でよく見られる教えです。たとえば、ケネス・ヘーゲンビル・ジョンソンといった他の繁栄の神学の教師も、同じようなことを語っています。これは、繁栄の神学自体が間違った神学体系であることを示唆しています。

さらに、この教えには続きがあって、マイヤーは次のようにも教えています。

「イエスは地獄で罪の代価を支払った」

マイヤーは十字架にかかった後のイエスについて、次のように教えています。3

イエスは私たちのいけにえとなり、十字架上で死んでくださったのです。イエスは死んだままではありませんでした。3日間、墓の中にいたのです。その間に、(律法的には)皆さんや私が罪のゆえに行くべき場所である地獄に入りました。イエスはそこで代価を支払ってくださったのです。

【原文を読む】

He became our sacrifice and died on the cross. He did not stay dead. He was in the grave three days. During that time he entered hell, where you and I deserve to go (legally) because of our sin. He paid the price there.

イエスが十字架上で死んだ後、地獄に行ったという教えは聖書にありません。イエスは十字架上で、同じく十字架にかけられながらも信仰告白をした犯罪人に次のように語っておられます(ルカ23:43)。

イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに言います。あなたは今日、わたしとともにパラダイスにいます。」 

イエスは犯罪人に「あなたは今日、わたしとともに地獄にいます」とはおっしゃいませんでした。イエスはその日のうちにパラダイスにいることを約束されました。

MEMO

イエスが十字架上で死なれた後に向かった先は、死者のたましいがとどまる「よみ」の中で義人が住む場所です。それが「パラダイス」と呼ばれる所です。詳しくは、聖書入門.comの用語集「ハデス」をご覧ください。

また、イエスが地獄で罪の代価を支払ったという教えも聖書にはありません。イエスは、私たちの罪に対する代価を地獄ではなく、十字架上で支払ってくださっています。イエスは十字架で息を引き取る前にこう言われています(ヨハネ19:30)。

イエスは酸いぶどう酒を受けると、「完了した」と言われた。そして、頭を垂れて霊をお渡しになった。

イエスの贖いは十字架で完結しています。1ペテロ2:24でペテロが語っているとおりです。

キリストは自ら十字架の上で、私たちの罪をその身に負われた。それは、私たちが罪を離れ、義のために生きるため。その打ち傷のゆえに、あなたがたは癒やされた。 

サタンは、人をキリストの十字架から遠ざけようとします。1コリント1:23~24が言うように、それが宣教の中心であるからです。

23  しかし、私たちは十字架につけられたキリストを宣べ伝えます。ユダヤ人にとってはつまずき、異邦人にとっては愚かなことですが、 24  ユダヤ人であってもギリシア人であっても、召された者たちにとっては、神の力、神の知恵であるキリストです。 

そのため、キリストの十字架の意義を失わせる教えには注意する必要があります。

マイヤーのおかしな教えはこれだけにとどまりません。

地獄で開かれた悪魔のパーティ

マイヤーは、イエスは十字架にかかって死んだ後、地獄で悪霊の虐待を受けたとも語っています。4

悪魔は自分が勝ったと思いました。悪霊たちは皆、これまでで一番大きなパーティーを開いていました。悪霊たちは私のイエスを床に寝かせ、イエスの背中に乗って飛び跳ね、笑っていました。そして、イエスは罪となったのです。神はどうしたものかと行ったり来たりしていたと思いませんか? 行われていることを止めようとしたのではありませんか? 地獄のすべての軍勢がイエスの上に襲いかかり、イエスの上に乗っかりました。天使は苦悶し、すべての被造物がうめき声をあげていました。すべての地獄の軍勢は、イエスの上に襲いかかっていました。イエスの上に。イエスの上に乗っていました。イエスを床に伏せさせてイエスの上に乗り、笑い、あざけっていました。「アハハ。神に信頼した結果がこれだと。神が救ってくれると思ったのか? 十字架から救ってくれると思ったのか? 神は救ってくれなかったじゃはないか。アハハ」

【原文を読む】

The devil thought he’d won. All they were having the biggest party they’ve ever been had. They had my Jesus in the floor and they were standing on his back jumping up and down, laughing. And he had become sin. Don’t you think that God was pacing? Wanting to put a stop to what was going on? All the hosts of hell were upon him. Upon it up on him. The angels are in agony all the creation is groaning. All the host of hell was upon him. Upon him. They got on him. They got him down in the floor and got on him and they were laughing and mocking, “haha, you trusted God and look where you ended up. You thought he’d save you and get you off that cross. He didn’t, haha.”

この話は完全にフィクションです。マイヤーが言うような記述は聖書のどこにもありません。このような奇妙な教えが出てくるのは、イエスは三位一体の神というキリスト教信仰の土台に堅く立っていないためです。

まとめ

ジョイス・マイヤーの教えには、繁栄の神学に見られる異端的な教えが多数含まれています。マイヤーの異端的な教えは、今回取り上げたもの以外にもあります。それについては次の記事で取り上げたいと思います。

参照資料


  1. Polite Leader, “Joyce Meyer || False Teacher” (https://www.youtube.com/watch?v=yagLOZLaAaA&t=15s)

  2. Marsha West, “Word of Faith False Teacher Joyce Meyer’s Shocking Doctrine and Heresy” (https://bereanresearch.org/word-of-faith-false-teacher-joyce-meyers-shocking-doctrine-and-heresy/)

  3. Joice Meyer, The most important decision you’ll ever make (1993), p. 35

  4. https://craigbrownsreformedtheology.files.wordpress.com/2011/09/clip-1-joyce-meyer.mp3