聖書信仰の見張り人たち

聖書信仰の見張り人たち

後の雨運動(2)「Manifest Sons of God」

2020.05.20 後の雨運動 

MEMO

この記事は、「後の雨運動」の解説シリーズの第2回目です。後の雨運動については、まず第1回目の記事をお読みになることをおすすめします。

使徒と預言者の回復を主張する新使徒運動の源流である「後の雨運動」の教えの中でも、特に危険な教えが「Manifest Sons of God(顕現した神の子どもたち)」という教えである。この教えは、後の雨運動が歴史の舞台から姿を消して以降も新使徒運動などのカリスマ派指導者たちに影響を与え続けている。地域を支配する悪霊と対決する「霊的戦い」や、終末時代には教会が世界を征服するという「ドミニオン神学」、超自然的なしるしと不思議を通して宣教するミニストリーといった新使徒運動の教えや実践も、この教えの延長線上にある。

この「Manifest Sons of God(顕現した神の子どもたち)」とは一体どのような教えなのだろうか。どのような点が危険で、注意する必要があるのだろうか。

この教えは何を教えているか

「Manifest Sons of God」は、終わりの時代には「勝利者(overcomer)」と呼ばれるクリスチャンのエリート集団が出現し、死ぬことがない栄光の体を受け、初代教会の使徒よりも大きなしるしと不思議を行って世界を支配し、史上最大のリバイバルを起こすという教えである。また、この信者のエリート集団は神の性質を持つようになり、実際に「神になる」と教える人々もいる。1

箇条書きで整理すると、次のような主張になる。

  • 終末時代には信者のエリート集団が現れ、キリストが千年間を治めることができるように世界を準備する。
  • この信者たちは、地上でキリストが文字通り受肉した人々となり、生きている間に死なない霊的な体を受ける。
  • この新しい体を滅ぼすことはできず、姿を変えたり、あらゆる言語を話したり、瞬間移動をしたりすることができる。
  • この信者は、初代教会の使徒よりも大きなしるしと不思議、奇跡を行う力を持っている。
  • 史上最大のリバイバルをもたらして世界の大半の人々をキリストに導き、大宣教命令を完遂する。2

「顕現した神の子どもたち(Manifest Sons of God)」と呼ばれている信者のエリート集団は、ヨシュア世代(Joshua Generation)、ヨエルの軍隊(Joel’s Army)、新人類(New Breed)といった名称で呼ばれることもある。

また、この新しい世代を導くのが、使徒と預言者を中心とする五役者3で、その働きによって教会が一致と完成に導かれ、教会は世界を支配すると教えられる。そのため、「Manifest Sons of God」の教えと「五役者の回復」の教えは切っても切れない関係にある。

MEMO

ヨシュア世代、ヨエルの軍隊、新人類はそれぞれ同じ集団を指すが、強調点が違う。

  • ヨシュア世代:超自然的なしるしと不思議を日常的に体験する生活を約束の地になぞらえて、約束の地に入り、征服する新しい世代であることに力点が置かれている表現。
  • ヨエルの軍隊:ヨエル2章で預言されている終末時代の軍隊のことで、ヨエル書が預言していたのはこの「Manifest Sons of God」のことであるとする。
  • 新人類:これまでの世代のクリスチャンや人類とは質的に異なる人々になることを強調している。

関連聖句と聖書的考察

ローマ8:19~21

この教えの「Manifest Sons of God(顕現した神の子どもたち)」という名称は、ローマ8:19の「神の子どもたちが現れる(manifestation of sons of God)」という言葉から来ている。ローマ8:19~21では次のように書かれている。

19 被造物は切実な思いで、神の子どもたちが現れる(manifestation of sons of God)のを待ち望んでいます。 20 被造物が虚無に服したのは、自分の意志からではなく、服従させた方によるものなので、彼らには望みがあるのです。 21 被造物自体も、滅びの束縛から解放され、神の子どもたちの栄光の自由にあずかります。

この聖句は、人類が堕落したことで自然界にもたらされたのろいが取り除かれる時が来ることを教えている。「Manifest Sons of God」の教えでは、この自然界の回復は、終末時代に現れる信者のエリート集団が世界を征服する時に起こると教える。これが「神の子どもたちが現れ」である。

しかし、この聖句の文脈と他の関連聖句を視野に入れると、そのような解釈には無理があることがわかる。この聖句は次のように続いている(ローマ8:22~23)。

22 私たちは知っています。被造物のすべては、今に至るまで、ともにうめき、ともに産みの苦しみをしています。 23 それだけでなく、御霊の初穂をいただいている私たち自身も、子にしていただくこと、すなわち、私たちのからだが贖われることを待ち望みながら、心の中でうめいています。

ここでパウロは、「私たち自身も、……私たちのからだが贖われることを待ち望み」と語っている。待ち望んでいるなら、いつ実現するのだろうか。パウロはピリピ3:20~21で次のように記している。

20 しかし、私たちの国籍は天にあります。そこから主イエス・キリストが救い主として来られるのを、私たちは待ち望んでいます。 21 キリストは、万物をご自分に従わせることさえできる御力によって、私たちの卑しいからだを、ご自分の栄光に輝くからだと同じ姿に変えてくださいます

パウロは、クリスチャンが栄光の体をいただくのは、キリストが再び来られる時であると明言している。つまり、キリストが再び来られる前に栄光の体、死なない体を受けるという「Manifest Sons of God」の教えは間違っていることがわかる。

1コリント15:51~54

信者のエリート集団が栄光の体を受けるという「Manifest Sons of God」の教えは、次の1コリント15:51~54も根拠にしている。

51 聞きなさい。私はあなたがたに奥義を告げましょう。私たちはみな眠るわけではありませんが、みな変えられます。 52 終わりのラッパとともに、たちまち、一瞬のうちに変えられます。ラッパが鳴ると、死者は朽ちないものによみがえり、私たちは変えられるのです。 53 この朽ちるべきものが、朽ちないものを必ず着ることになり、この死ぬべきものが、死なないものを必ず着ることになるからです。 54 そして、この朽ちるべきものが朽ちないものを着て、この死ぬべきものが死なないものを着るとき、このように記されたみことばが実現します。「死は勝利に吞み込まれた。」

「Manifest Sons of God」の教えは、この聖句は終末時代の最後に成就し、その世代の信者のエリート集団が死なない栄光の体を地上で受けると教える。しかし、これはクリスチャンが地上から上げられて空中で主と会う携挙(空中再臨)の時に起こることで、地上で起こることではない。それは、1テサロニケ4:14~17を見るとわかる。

14 イエスが死んで復活された、と私たちが信じているなら、神はまた同じように、イエスにあって眠った人たちを、イエスとともに連れて来られるはずです。 15 私たちは主のことばによって、あなたがたに伝えます。生きている私たちは、主の来臨まで残っているなら、眠った人たちより先になることは決してありません。 16 すなわち、号令と御使いのかしらの声と神のラッパの響きとともに、主ご自身が天から下って来られます。そしてまず、キリストにある死者がよみがえり、 17 それから、生き残っている私たちが、彼らと一緒に雲に包まれて引き上げられ、空中で主と会うのです。こうして私たちは、いつまでも主とともにいることになります。

この聖句によると、まず(1)キリストにあって死んだ人々が復活した後、(2)生きているクリスチャンが空中でキリストと会うと言われている。また、ピリピ3:20~21で見たとおり、クリスチャンが栄光の体を受けるのは、キリストが来られる時だった。つまり、出来事の順序は次のようになっている。

  1. キリストが再び来られる(空中再臨)。
  2. キリストにある死者が復活する。
  3. 生きているクリスチャンが栄光の体を受ける(携挙)。

聖書に書かれている出来事の順序を見ると、空中再臨も、キリストにある死者も復活していない段階で、栄光の体を受けるはずがないということがわかる。

このような誤った教えが出てくる要因の1つとして、「Manifest Sons of God」の論者が携挙を否定していることがある。新使徒運動のリック・ジョイナーの以下の言葉は、この教えの代表的な立場を代弁している。

携挙の教理は、実に効果的な敵(訳注:サタン)の策略であって、教会に現実逃避の精神を植え付けるものである。……このくびきは先進的な教会の大部分ではすでに捨てられており、すべての教会が捨て去る日も近い。4

【原文を読む】

The doctrine of the Rapture was a great and effective ruse of the enemy to implant in the Church a retreat mentality … already this yoke has been cast off by the majority in the advancing church, and it will soon be cast off by all.

しかし、「Manifest Sons of God」の教えが間違っていることは、上記の聖書箇所から明らかである。

MEMO

携挙の否定は、「Manifest Sons of God」の教えが発展していく1950年代以降の傾向だ。後の雨運動の初期は、携挙が一般的に信じられていた。

この教えの起源と展開

「Manifest Sons of God」の教えの基本となる「クリスチャンが地上で不死の体を得る」という考えは、フランクリン・ホール(Franklin Hall)という人物が唱え始めたと言われている5。このフランクリン・ホールは「断食によってリバイバルがもたらされる」という教えによって後の雨運動に大きな影響を与えた人物でもあり、後の雨運動の指導者の1人、アーネスト・ホーティンはホールについて次のように語っている。

断食の真理はリバイバルに大きく貢献した要因の1つであった。リバイバルが起こる1年前に、私たちはフランクリン・ホールの著書『Atomic Power With God Through Fasting and Prayer』(断食と祈りによる神の原子力)を読んでいた。これを読み、すぐに断食を実践し始めた。それまでは、長い期間断食できるとは考えていなかった。このリバイバルは、すばらしいホール兄弟がこの偉大な真理を回復してくれなかったら起きていなかった。6

【原文を読む】

The truth of fasting was one great contributing factor to the revival. One year before this we had read Franklin Hall’s book “Atomic Power With God Through Fasting and Prayer.” We immediately began to practice fasting. Previously we had not understood the possibility of long fasts. This revival would never have been possible the restoration of this great truth through our good brother Hall.

もう一人、この教えの元となる教えを語ったのは、後の雨運動の火付け役となったウィリアム・ブランハムである(ブランハムもホールの影響を受けていた人物の1人)。ブランハムは、次のように「Manifest Sons of God」の教えを語っている。

人は神となるようにつくられた。人の領域は地球である。地球全体が、神の子の現れを待ち望んでいる。7

【原文を読む】

Man was made to be a god. His domain is the earth. The whole earth’s awaiting now for the manifestation of the sons of God to be made manifest.

また、この教えが広がるのに一役買ったのは、後の雨運動の発祥の地であるカナダのシャロン聖書学校で語られた以下の「預言と幻」であると思われる。

御霊が学校全体に一斉に下り、あらゆる人が預言を語り始めた。この御霊の現れには、このディスペンセーション(時代)の終わりの日に現れる神の子どもたちの幻が伴っていた。この力ある軍隊は、目の前にあるものをすべて征服していった。病気や疾患は消えてなくなり、神の民の圧倒的な力を前にして、悪霊はすべて散り散りになって逃げ去った。8

【原文を読む】

The spirit fell simultaneously upon the whole school and all began to prophesy together. This great demonstration was accompanied by a vision of the manifest sons of God in the last days of this dispensation. This mighty army was seen conquering all before it. Sickness and disease were vanishing, and all evil spirits were scattered before the triumphant power of God’s people.

MEMO

この預言の成就がどうなったのかについては、第3回の記事で取り上げる。

そして、この教えが体系化されるのに大きな役割を果たしたのが、後の雨運動の「組織神学の書」と呼ばれたジョージ・ワーノック(George Warnock)の『Feast of Tabernacles(仮庵の祭り)』という著書だ。ワーノックは次のように記している。

[旧約聖書の祭りは]教会時代全体の「型」となっており、イエスの十字架上の死に始まり、「神の子どもたちの現れ」で完成する。この人々は、完全な者とされ、地上で神の国を設立するために不死の体を得る「勝利者」となる。9

【原文を読む】

[The Old Testament feasts] typify the whole Church Age, beginning with the death of Jesus on the cross, and consummating in ‘the manifestation of the Sons of God’–the ‘overcomers’ who will become perfected and step into immortality in order to establish the Kingdom of God on earth.

しかし、私たちはこのことを確信している。教会は携挙を待ち望んでいるが、携挙が今あることを知らないので、その栄光を奪われている。……待望している携挙や復活が起こる前に、キリストにある復活のいのちという相続財産(heritage)を今、この地上で受ける勝利者の集団が現れる。神は、ご自身のひとり子を天の右の座に着かせ、すべての敵を御子の足の下に従わせるまでは天にとどまるようにと言われた(詩篇110:1、1コリント15:25、26)。御子は、御父のことばに従い、御霊にあって相続地(heritage)に入り、所有し、世と肉と悪魔の敵対勢力をすべて征服する人々が現れるまで、天にとどまっておられる。10

【原文を読む】

We are sure of this, however, that the Church is being robbed of her glory in not knowing that there is rapture for her even now, while waiting for Rapture, and there is resurrection here and now while we wait for Resurrection… before this cherished rapture or resurrection takes place, there is to arise a group of overcomers who shall appropriate even here and now their heritage of Resurrection Life in Jesus Christ. God has placed His only Begotten at His own right hand in the heavenlies, until all his enemies have been placed under His feet. (Ps. 110:1; 1 Cor. 15:25,26.) There He shall remain, in obedience to the Word of the Father, until there ariseth a people who shall go in and possess their heritage in the Spirit, and conquer over all opposing forces of World, Flesh, and Devil.

こうして、「Manifest Sons of God」の教えは後の雨運動の指導者の中で形成され、発展していった。

「Manifest Sons of God」の教えがどのようなものかを理解したところで、次はこの教えを現在も教え続けている人々を紹介したいと思う。

この教えを今に伝える人々

「Manifest Sons of God」の教えは、第二次世界大戦直後の後の雨運動で主張されたものだが、現在もこの教えを継承する人々が数多くいて、新使徒運動(NAR)やワード・オブ・フェイス運動の教えに影響を与えている。

以下に、「Manifest Sons of God」を教える代表的な指導者を取り上げ、その言葉を引用する。

MEMO

ワード・オブ・フェイス運動は、積極的な言葉を告白し、信仰の行い(献金など)を行うことで、健康や富を得ることができるという教え。「繁栄の神学」と呼ばれることもある。

新使徒運動(NAR)

ビル・ハモン(Bill Hamon)

後の雨運動に直接参加していたビル・ハモンは、「Manifest Sons of God」の教えを今に伝える主要な指導者の一人である。また、C・ピーター・ワグナーなど、新使徒運動の中心的指導者に大きな影響を与えた。

地球とすべての被造物は、神の子どもたちの現れを待ち望んでいる。その現れの時に、それらは完成と不死の状態に移行するのである。……教会がみずからの相続財産と贖いをすべて受け取る時に、被造物は腐敗、変化、死の呪いから贖い出される。……教会は、ほかの被造物に対して、責任と果たすべき働きを負っているのである。地球とその自然界は、教会が完全に成長して、子としての完全な状態に達するのを今か今かと待ち望んでいる。教会が子としての完全な状態に達したら、体の贖い11が実現し、それが被造物全体の中で贖いの連鎖反応を起こすのである。12

【原文を読む】

The Earth and all of creation is waiting for the manifestation of the sons of God, the time when they will come into their maturity and immortalization…. When the Church receives its full inheritance and redemption then creation will be redeemed from its cursed condition of decay, change and death….the Church has a responsibility and ministry to the rest of creation. Earth and its natural creation is anxiously waiting for the Church to reach full maturity and come to full sonship. When the Church realizes its full sonship, its bodily redemption will cause a redemptive chain reaction throughout all of creation.

ポール・ケイン(Paul Cain)

ポール・ケインは、いやしの伝道者の元祖とも言えるウィリアム・ブランハムのアシスタントを務めていた人物で、みずからも後の雨運動に関わっていた人物だ。ケインは、後の雨運動と新使徒運動をつなぐもう一人の指導者である。また、「カンザスシティの預言者」と呼ばれ、マイク・ビックルの「国際祈りの家」(IHOP:International House of Prayer)の働きを助けてきた。ケインは、預言者運動を初期の頃から推進してきた人物としても知られている。

[ヨエルの軍隊は]病気にならないだけではなく、死ぬこともない。コリント書の15章で語られている朽ちない体を得るのである。……この軍隊は無敵である。神との親密な関係があれば、人々はあなたを殺せない。13

【原文を読む】

Not only will they not have diseases, they will also not die. They will have the kind of imperishable bodies that are talked about in the 15th chapter of Corinthians… this army is invincible. If you have intimacy with God, they can’t kill you.

リック・ジョイナー(Rick Joyner)

リック・ジョイナーも、ケインと同じくカンザスシティの預言者の一人で、モーニングスター・ミニストリーズ(MorningStar Ministries)という団体で新使徒運動を推進している。ワグナー亡き後、新使徒運動を代表する指導者の一人だ。

聖徒にとって、御使いが現れることは日常的な出来事となり、聖徒を通して力が流れ出る時に、目に見える主の栄光が一定の長い時間現れるようになる。この時代には、聖徒の内に働くいやしと奇跡の賜物によっていやせない疫病や病気はなく、手足が失われたり、AIDS、毒ガス、放射線によって肉体が冒されていても直せないものはない。14

【原文を読む】

Angelic appearances will be common to the saints and a visible glory of the Lord will appear upon some for extended periods of time as power flows through them. There will be no plague, disease, or physical condition, including lost limbs, AIDS, poison gas, or radiation, which will resist the healing and miracle gifts working in the saints during this time.

キリストのからだ(訳注:教会)に訪れようとしている変化はあまりにも深く大きいので、この世が持つキリスト教の定義を変えてしまうだろう。……真理の内にあって主に従う者は……地上で最も危険で力ある民となり、現在主の代わりに教会に住みついている反キリストの霊にとって最大の脅威となる。15

【原文を読む】

The change that is coming to the body of Christ is so profound that the world will have a new definition of Christianity… Those who submit to Him in truth … will be the most dangerous and powerful people on earth, and will be the greatest threat to the Antichrist spirit that now sits in the church as a substitute for Him.

ジョン・アーノット(John Arnott)

ジョン・アーノットは、「トロント・ブレッシング」で有名になったトロント・エアポート・クリスチャンフェローシップ教会の牧師だ。

みなさんに言うが、少しばかりのレムナント(残れる者)が、反キリストか何かに絶滅させられる前にこの惑星から救い出されるという終わり方はしない。教会は、栄光の内にあって出て行く。それは、神がそのように定められたからだ。私たちは勝利者となるのだ!16

【原文を読む】

I’m telling you, this is not going to end with a tiny remnant getting rescued off the planet before they get exterminated by the Antichrist or something. The church is going out in glory, because God the Father has purposed it! And we’re going to be victorious!

ボブ・ジョーンズ(Bob Jones)

ボブ・ジョーンズは、ポール・ケインと共にカンザスシティの預言者と呼ばれ、マイク・ビックルの「国際祈りの家」(IHOP:International House of Prayer)の働きを共に推進してきた人物だ。

彼ら(訳注:終末時代の信者のエリート集団)は、これまでだれも踏み入れたことのない超自然的な領域に足を踏み入れる。聖書に記されているあらゆる奇跡、しるし、不思議が起こり、それが日常のことになる。彼らはキリストが歩まれたように力の内を歩む。終わりの日には、これまでにあったあらゆるしるしと不思議が何倍にもなって起こる。彼らが、死を足の下に従わせ、あらゆる面でキリストの栄光をほめたたえる世代となるのである。……そして、政府の中で教会の地位が高められ、政府のかしら、覆いとなることで、終わりの日に栄光に満ちた教会が現れる。主イエスは、神人(god-man)として完全な姿に成長した教会からほめたたえられるのにふさわしい方だからである。17

【原文を読む】

They will move into things of the supernatural that no one has ever moved in before. Every miracle, sign, and wonder that has ever been in the Bible – they’ll move in it consistently. They’ll move in the power that Christ did. Every sign and wonder that’s ever been will be many times in the last days. They themselves will be the generation that’s raised up to put death itself underneath their feet and glorify Christ in every way… And the Church that is raising up in the government will be the head and the covering for them, so that the glorious Church might be revealed in the last days because the Lord Jesus is worthy to be lifted up by a Church that has reached the full maturity of the god-man.

ボブ・ジョーンズの教えには、教会が「神人(god-man)」となる、つまりクリスチャンは人であり、神でもあるという明らかに異端的な教えが含まれている。この「クリスチャンが神となる」という教えは、ワード・オブ・フェイス運動でさらにあからさまな形で主張されている。

ワード・オブ・フェイス運動

以下に紹介するワード・オブ・フェイス運動の代表的な指導者に共通するのは、「クリスチャンは小さな神(little god)」という教えだ。これはもはやキリスト教と言えるものではなく、現代の異端である。

ケネス・ヘーゲン(Kenneth Hagin)

ケネス・ヘーゲン(1917~2003年)は、ワード・オブ・フェイス運動の創始者とされている人物だ。ヘーゲンは、若い頃は後の雨運動の伝道者だった。

新生したすべての人は受肉した者であり、キリスト教は奇跡である。信者は、ナザレのイエスがそうであったのと同じく、受肉した者である。18

【原文を読む】

Every man who has been born again is an incarnation and Christianity is a miracle. The believer is as much an incarnation as was Jesus of Nazareth.

[人は]神と等しい存在として創造されたので、何の劣等感を感じることなく神の臨在の中で立つことができる。……神は、ご自分にできるだけ似た者となるよう人を創造された。……神は、神ご自身と同じ階級の存在としてつくられた。……人は神の領域で暮らしていた。人は神と対等の立場で生きていた。……信者はキリストと呼ばれる。……それが私たちの本来の姿である。私たちはキリストなのだ。19

【原文を読む】

[Man] was created on terms of equality with God, and he could stand in God’s presence without any consciousness of inferiority… God has made us as much like Himself as possible… He made us the same class of being that He is Himself… Man lived in the realm of God. He lived on terms equal with God…[The] believer is called Christ…That’s who we are; we’re Christ.

ケネス・コープランド(Kenneth Copeland)

ケネス・コープランドは、ケネス・ヘーゲンの影響を受けて同様のミニストリーを開始し、ヘーゲン亡き今ではワード・オブ・フェイス運動を代表する人物となっている。

エリシャとエリヤが持っていた力と、ペテロとパウロが持っていた力を同時に兼ね備えた状態で歩き回っている人を想像できるだろうか。そのような時が今まさに来ようとしているのだ!20

【原文を読む】

Can you imagine somebody walking around with the power that Elisha and Elijah had and the power that Peter and Paul had–all at the same time! It’s about to happen!

イエスはもはや唯一の神のひとり子ではない。21

【原文を読む】

Jesus is no longer the only begotten Son of God.

言うまでもないことだが、ここでコープランドは、イエスは唯一の「神のひとり子(only begotten son)」ではないと言うことによって、クリスチャンも、イエスと同じ「神のひとり子」であり、神であると宣言していることになる。

ベニー・ヒン(Benny Hinn)

ベニー・ヒンは「いやしの伝道者」として日本でも有名で、『聖霊さま、おはようございます!』(マルコーシュパブリケーション、1994)など、著書の邦訳も多数出ているのでクリスチャンであれば知っておられる方も多いと思う。ヒンも、クリスチャンは「小さな神」と主張する異端の教えを展開している。

あなたが「私はクリスチャンです」と言う時、ヘブル語では「私はマシアハです」と言っていることになります。つまり、私は地上を歩いている小さなメシアだということです。これは衝撃的な啓示です。……それをこのように言うこともできるでしょうか。あなたは地上を動き回っている小さな神です、と。22

【原文を読む】

When you say, ‘I am a Christian,’ you are saying, ‘I am mashiach,’ in the Hebrew. I am a little messiah walking on earth, in other words. That is a shocking revelation. …May I say it like this? You are a little god on earth running around.

あなたは啓示による本物の知識を受け取る準備ができていますか。……あなたは神です。23

【原文を読む】

Are you ready for some real revelation knowledge….you are god.

この教えの危険性

「アポテオーシス(神化)」

「クリスチャンは神」と教えるワード・オブ・フェイス運動は現代の異端と言える。また、新使徒運動の指導者の中には、そこまであからさまな表現を使っている人は少ないが、終末時代のクリスチャンがイエス以上のしるしや奇跡を行う、地上で栄光の体を受けるという、それに準ずる教えを奉じている人々は数多くいる。

この「クリスチャンは神」という主張は、古くから「アポテオーシス(神化)」として知られる異端で、改革派の神学者R・C・スプロールはアポテオーシスについて次のように語っている。

正統性(orthodoxy)のもう1つのポイントは、キリストの受肉(受胎と誕生)の唯一性に関係している。キリストのみが神人(God-man)である。……キリストは私たちと人性は共有しても、神性は共有しない。神性をご自分の民に授けることはないのである。御霊は私たちの内に住まれ、働かれるが、御霊の内住があるからといって私たちが受肉した神になることはない。……この教えは歴史的に「アポテオーシス(神化)」の異端として知られているが、多くの現代のグノーシス主義者は、ほかのだれも気付かなかった事実を見出したと考えているようである。そうした人々は明らかに、自分のひらめきが2千年間、異端者によって度々主張されてきたことを知らないか、そんなことはどうでもよいと思っているのである。24

【原文を読む】

Another crucial point of orthodoxy has to do with the (sic) uniqueness of Christ’s incarnation (conception and birth). Christ alone is the God-man… Christ shares His humanity with us, but not His deity. He does not impart deity to His people. The Spirit dwells in us and works in us, but that indwelling does not make us gods-incarnate… Known historically as the heresy of Apotheosis (“becoming God”), many modern Gnostics appear to think they have found something everybody else has failed to notice. Evidently, they either do not know or do not care that these flashes of insight have been articulated by heretics from time to time for two thousand years.

スプロールの言葉を借りると、「Manifest Sons of God」の教えを信じる上記の人々は、「現代のグノーシス主義者25」と呼ぶことができる。グノーシス主義は、初代教会の時代からあった異端である。異端との戦いは、新約聖書の時代から今に至るまで続いている。

モルモン、エホバの教えとの共通点

スプロールが言うように、アポテオーシスの異端は後の雨運動以前からあった。近代では、モルモン教とエホバの証人がその代表格で、どちらもキリスト教会では異端とされている。以下はエホバの証人の教えだ。

我々の大いなる召しは偉大で、人の理解を超えているので、我々が「新しい生命体」について語ると、人々は我々が冒涜の罪を犯していると感じるだろう。その生命体はもはや人間ではなく、「神の性質に与る存在」である。それは「我々は神的存在である。それゆえみな神である」という主張である。そのように、私たちには神の家族がいる。……私たちは、今は人間のように見えて、人間のようにみな肉体は死ぬが、復活の時には神としての本来の性質をまとってよみがえる。……そして、家族全体、かしら(頭)とからだが1つのものとして扱われる。みな、かしらであるキリストの下にあり、こう言われているためである。「神よ。立ち上がって、地をさばいて(支配して、祝福して)ください。すべての諸国をすべての国々を相続されるからです」。力ある神、諸国の永遠の父はキリストであり、我々はその手足である。26

【原文を読む】

Our high calling is so great, so much above the comprehension of men, that they feel that we are guilty of blasphemy when we speak of being ‘new creatures’ – not any longer human, but ‘partakers of the divine nature.” It is claiming that we are divine beings – hence all such are Gods. Thus we have a family of God …. Now we appear like men, and all die naturally like men, but in the resurrection we will rise in our true character as Gods … Then the whole family – head and body are addressed as one, as they will be under Christ, their head, saying: Arise 0 God, judge (rule, bless) the earth: for thou shaft inherit all nations. The Mighty God, and Everlasting Father of the nations is Christ whose members in particular we are.

19世紀のキリスト教会は、こうした教えに対して異端と断定し、教会を守った。しかし、今日の教会はどうだろうか。教会を守る働きを十分にしていると言えるだろうか?

まとめ

「人が神のようになる」という教えは、1870年代に始まったエホバの証人よりもはるかに古くからある。その歴史は古く、人類の歴史の最初にまでさかのぼることができる。創世記3:4~5にはこう書かれている。

4 すると、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。 5 それを食べるそのとき、目が開かれて、あなたがたが神のようになって善悪を知る者となることを、神は知っているのです。」

ここはよく知られている聖書箇所で、人類最初の女エバとサタン(蛇)の会話だ。「人が神のようになる」という最初の教えが、人類の歴史が幕を開けた直後から語られているのである。

この教えが猛威を振るうのが、終わりの時代だ。1テモテ4:1~2で次のように警告されているためである。

1 しかし、御霊が明らかに言われるように、後の時代になると、ある人たちは惑わす霊と悪霊の教えとに心を奪われ、信仰から離れるようになります。 2 それは、良心が麻痺した、偽りを語る者たちの偽善によるものです。

「後の時代」(終わりの時代)になると、人々は「悪霊の教え」に心を奪われて、信仰から離れるようになると警告されている。ここで言われている「悪霊の教え」とは何だろうか。間違いなく言えるのは、悪霊の代表であるサタンが創世記3:4~5で語っている「人が神のようになる」という教えは、悪霊の教えであるということだ。つまり、1テモテ4:1で預言されていることが、今日の「教会」に集う「クリスチャン」と言われる人々の中で実際に起こっているのである。「Manifest Sons of God」の教えが危険であるのは、この聖句で言われているように、その教えによって惑わされた人々が「信仰から離れる」と言われているためである。

R・C・スプロールが言うように、クリスチャンは神の子とされているが、あくまでも人であって、永遠に神にはならない。それは当然のことだが、クリスチャンの最終目的地である「永遠の御国」の描写で次のように言われていることからもわかることである(黙示録22:3~4)。

3 もはや、のろわれるものは何もない。神と子羊の御座が都の中にあり、神のしもべたちは神に仕え、 4 御顔を仰ぎ見る

人類史の最終章で、神を信じる人々は神に等しい者ではなく、神に仕え、神を礼拝する者とされる。それが、地上生活を送るクリスチャンが目指す目標でもあるはずだ。

記事を書いた人:佐野剛史

参考文献


  1. この後に見るワード・オブ・フェイス運動の指導者のように、明確に「クリスチャンは神になる」と教える人々もいるが、そうとは語らない人々もいる。ただし、しるしや不思議を行うクリスチャンのエリート集団が現れるという教えは共通している。

  2. Manifest Sons of God“, Theotopia  

  3. 教会の働き人としてエペソ4:11に記されている「使徒、預言者、伝道者、牧師、教師」のこと。 

  4. Rick Joyner, THE HARVEST revised booklet (1989/1990), p.121 

  5. Charles Graves, *Anointing or Apostasy? The Latter Rain Legacy, p.22 

  6. Ernest Hawtin, “How This Revival Began”, (The Sharon Star, 1 August 1949), p. 3 

  7. William Branham, “Show Us The Father and It Will Satisfy Us” (July 31, 1960) 

  8. George Hawtin, “Editorial”, The Sharon Star, (April 1, 1949), p. 2 

  9. George Warnock, The Feast of Tabernacles (1951), pp. 14-20 (cited in Russell Sharrock, Covenant Theology: A Critical Analysis of Current Pentecostal Covenant Theology (Lulu.com, 2006)) 

  10. George Warnock, The Feast of Tabernacles (Kindle版) 

  11. ここで「体の贖い」とは栄光の体を受けること。 

  12. Bill Hamon, The Day of the Saints (Destiny Image, 2012 ), p.385 (Kindle 版)  

  13. Paul Cain, Joel’s Army (1990), p. 218 (cited in Jewel Van der Merwe, Joel’s Army, 1990, p. 218) 

  14. Rick Joyner, The Harvest (Whitaker House, 1989), pp. 128-129 

  15. Rick Joyner, Morningstar Journal, Vol.2, No.1). 

  16. John Arnott, “Hard to Receive,” Toronto Airport Christian Fellowship Message 

  17. Bob Jones, ”Visions and Revelations” (Fall 1988) 

  18. Kenneth Hagin, “The Incarnation,” The Word of Faith (Dec. 1980), p.13 

  19. Kenneth Hagin, Zoe: The God-Kind of Life, (Faith Library Publications, 1989), pp. 35-36, 41  

  20. Kenneth Copeland, “Believer’s Voice of Victory,” (June 1994)  

  21. Kenneth Copeland, Now We Are In Christ Jesus (Kenneth Copeland Publications, 1980), p.24 

  22. Benny Hinn, “Praise-a-Thon”, TBN, November 6, 1990 

  23. Benny Hinn, “Our Position In Christ”, tape AO31190-1 

  24. R. C. Sproul, “A Serious Charge”, in The Agony of Deceit, (Chicago: Moody Press, 1990), p. 43, 44 

  25. グノーシス主義とは:「歴史的には、初期ユダヤ教の周縁に、原始キリスト教とほぼ同じ頃に現れ、やがてキリスト教と接触するに及んで、最大の『異端』とされた。なぜなら、本来の人間は至高の神の一部である、という思想であったからである。ただし、現実の人間は居場所を間違っている。それゆえ、自分の本質を認識(ギリシア語で「グノーシス」Gnosis)して、本来の場所へ立ち帰らねばならないというのである」(大貫隆 訳・著『グノーシスの神話』(講談社、2014年)p.16) 

  26. Watchtower, 10 & 11/1881, p. 10, Reprints, p. 301