聖書信仰の見張り人たち

聖書信仰の見張り人たち

カンザスシティ・フェローシップ(現IHOP)に見る預言者運動の危険性(1)砂の上に建てた家

「現代にも預言者はいるのか?」という問いは、多くのクリスチャン、いやクリスチャンでない人であっても抱く疑問であると思います。

この問いに対して、「現在にも預言者はいる」と答えるのが、新使徒運動(NAR)です。新使徒運動では、使徒職の次に重要なポジションが預言者職とされており、教会を導く指導者として重視されています。また、現代の預言者運動は新使徒運動に先駆けて始まっており、新使徒運動の土台となったと言われています。

カンザスシティ・フェローシップ(現IHOP)のケース

しかし、聖書的にも、実践的にも、現代の預言者運動はさまざまな重大な問題を抱えています。その問題を考える上で一つのケーススタディとなるのが「カンザスシティ・フェローシップ(Kansas City Fellowship:KCF)」と呼ばれる団体です。この団体は、マイク・ビックルという牧師が米国ミズーリ州のカンザスシティに創設したもので、現在は国際祈りの家(International House of Prayer:IHOP)という名称で活動しています。この団体の「使徒」的存在がビックルで、その下で次のような「預言者」と呼ばれる人々が活動していました。

  • ボブ・ジョーンズ(Bob Jones)
  • ポール・ケイン(Paul Cain)
  • ジョン・ポール・ジャクソン(John Paul Jackson)
  • オーガスティン・アルカラ(Augustine Alcala)

KCFの預言者は「カンザスシティの預言者」と呼ばれ、1980年代から2010年代にかけて活動しました。ただし、現在ではすでに全員が亡くなっており、ビックルは今では上記の預言者が行ったとされる「預言」をベースにメッセージを語り、活動しています。

「預言」によって始まった運動

マイク・ビックルの働きは、次のように始まったと言われています。1

「国際祈りの家」の起源は、1982年にオーガスティンという男がマイク・ビックルに近づき、会衆に預言するようにという声を聞いたと告げたことに始まる。 その後、マイク・ビックルは同じ年にエジプトのカイロを旅行中に、自分に話しかける声を聞いたという。 その声は、次のように語ったとビックルは主張している。「わたしは、地の果てにまで届く働きを起こすために、あなたを招いている。わたしはこのことをするように多くの人を招き、『やります』と言った者は多かったが、わたしの思いを実行に移した人はほとんどいなかった 」

【原文を読む】

The origin of the International House of Prayer started in 1982 after a man named Augustine approached Mike Bickle and said an audible voice told him to prophesy to his congregation. Later that year, Mike Bickle claimed to hear an audible voice speaking to him while traveling in Cairo, Egypt. The voice told him, “I am inviting you to raise up a work that will touch the ends of the earth. I have invited many people to do this thing and many people have said yes, but very few have done my will.”

これを読むと、マイク・ビックルの働きは、預言者の「預言」と自分自身の聞いた「神の声」によって始められたことがわかります。この「声」について、ビックルは次のように語っています。2

1982年9月に、エジプトのカイロで、主はダイナミックな神の働きについて語られ、こう言われた。「わたしは、この地上でキリスト教に対する理解とキリスト教の表現を一世代で変える」

【原文を読む】

In Cairo, Egypt, in September 1982, the Lord spoke of a dynamic move of God, saying, “I will change the understanding and expression of Christianity in the earth in one generation.”

実際に、ビックルはこの「声」のとおりに、預言者が語った「預言」を中心にしたメッセージや活動によって、従来のキリスト教の概念を打ち破っていきます。しかし、問うべきことは、そのような変化が良いものか、悪いものか、という点です。その点を検証することで、この「声」が本当に神の声かどうかがわかってきます。

カンザスシティ・フェローシップに関する証言

以下にカンザスシティ・フェローシップがどのような活動を行い、どのような影響を与えてきたかを検証しますが、その資料として、主にアーニー・グルーエン(Ernie Gruen)という牧師が編集した以下の証言集と著作を使用します。

  • 証言集:Ernest Gruen, “Documentation of The Aberrant Practices and Teachings of Kansas City Fellowship (Grace Ministries)” (PDF版)(ダウンロードページ
  • 著作:Ernie Gruen, False Prophets: Do We Keep Smiling and Say Nothing? (2018) (Kindle版)

著者のアーニー・グルーエンは、カンザスシティのカリスマ派メガチャーチの牧師で、マイク・ビックルがカンザスシティに来た時からの旧知の仲です。カンザスシティで活動するカリスマ派教会の牧師会にマイク・ビックルを誘ったのもグルーエンです。当初はビックルを信頼して目を掛けていたグルーエンですが、カンザスシティ・フェローシップが起こす数々の問題を無視することができず、警告の声を上げ始めました。以下の証言は、主にこの2つの資料から引用しています。

成就しなかった偽預言

預言者運動を検証するにあたって最も重要になるのは、「預言者と言われる人物の語る将来の預言が果たして成就したのか」という点です。この点で、「カンザスシティの預言者」と言われる人々は不合格ということになります。以下にそれを裏付ける証言を紹介します。

株式市場暴落の預言

1987年に香港発で世界的な株価大暴落が起こったことがありました。この直後、「カンザスシティの預言者」の一人であるジョン・ポール・ジャクソンは、1988年も株価の大暴落が起こると預言しましたが、実際には何も起きませんでした。証言集では次のように言われています。3

 たとえば、10月に株式市場で暴落があった後の1987年11月に、ジョン・ポール・ジャクソンはこれから株価が下落し、1988年は株式市場にとって厳しい年になると警告して「あちらこちらで厳しい状況になるが、1988年に起こることはそれとは比較にならない」と述べている。 それに負けじとボブ・ジョーンズも、1988年2月に「今年に起こるもう一つのことは、金融崩壊だ」と警告している。「どれくらい早く来るかわからないが、本当にすぐに来ると私は思っている。……それ(株式市場)は最終的に400ポイントまで下がるだろう。お金を入れている人は……普通株と呼ばれているもの……何と言うのか? ミューチュアル・ファンドか。そうしたものにお金を投資している人は、早くそれを引き上げるようにすすめる……金融崩壊はすぐそこだ……」 実際のところ、1988年には金融崩壊に似たようなことは何一つ起こらなかった。株式市場の最安値は400ポイントではなく、1879.14であり、その年の終値は2168.50で、年始の始値よりも高かった。

【原文を読む】

For example, in November of 1987, after the stock market plunge in October, John Paul Jackson warns that there’s going to be a fall in the stock market, that 1988 will be a severe year for the stock market, and that “it will be severe between here and there, but nothing like 1988 will bring.” Not to be outdone, Bob Jones warned in February of 1988, “Another thing that will be this year is financial collapse. I don’t know how soon–I really expect it right away…It (the stock market) will eventually come down to 400 points. If you’ve got money in–they call it common shares or something like that…what do they call them? Mutual funds–if you’ve got money in that, I encourage you to get it out of there real quick-like…that financial collapse is at hand…I always like to just warn you…” In actual fact, there was nothing that even remotely resembled a financial collapse in 1988. The market low was 1879.14 rather than 400 points, and the year closed at 2168.50, higher than it began.

干ばつの預言

マイク・ビックルは、1983年の夏(6~8月)に干ばつが起きるというボブ・ジョーンズの預言が成就したことを超自然的なしるしとして繰り返し喧伝し、カンザスシティ・フェローシップが神のムーブメントであることの証左だと主張してきました。しかし、実際は、この干ばつの預言は実現していません。この預言について、マイク・ビックルは次のように語っています。4

マイク・ビックル:「(ボブの言葉を引用して)『これが天上のしるしです。…… この町には3か月間、干ばつが起きます』。……このしるしは天で決まること、気象のパターンであり、人間には気象のパターンを操作することはできないので、私たちは『それが実現すれば、この言葉が真実であることがわかるな』と言っていました。……ところがボブは、『8月23日に、神が天からしるしを送られる……』と語ったのです。『ボブ、そうだといいな』と私は言いました。というのは、その時は状況がひどかったからです。6月はまったく雨が降りませんでした。……実際に8月23日の夜6時に雨が降り始め、何と3~4インチ(76mm~101mm)の降雨量があったのです。……それは人には操作できない天のしるしでした」

【原文を読む】

MB: “ (Quoting Bob) ‘This is the sign in the heavens, again. . . For three months there will be a drought in this city.’… The sign is (that) there will be a pattern in the heavens–a weather pattern, and you can’t manipulate weather patterns, so we said, ‘Okay. if it comes to pass. we know the word is true.’…But he says, ‘On August 23, God will send a sign from heaven…’ I said, ‘Bob, I hope this is right.’ Cause it was terrible. June–no rain…August 23, 6:00 at night, it rains, what, 3 to 4 inches of rain…It was a sign in the heavens that no man could have manipulated; it was spoken publicly for all to hear.”

しかし、アーニー・グルーエンは、1983年6月~8月の気象データを引用し、7月の降雨量は例年を上回っていたこと、8月23日の降雨量は実際には0.32インチ(8mm)で、6月にはそれを上回る降雨量の日が6日間もあったことなどを記し、次のように結論付けています。5

干ばつはなかった。外に出たり、新聞を読んだりしていた人なら誰でも、 6月が干ばつだと考えることはできなかった。8月23日に降った雨も、干ばつを解消する雨ではなかった。この預言は、ムーブメントを推進するための完全なでっち上げだった。最初から、この預言が実現したと考えられたことは一度もなかったのである。

【原文を読む】

There was no drought. Anyone who went outside or read the newspaper could not have considered June a month of drought. The sprinkle of rain on August 23 was not considered a drought-breaker. This prophecy did not happen; it was a total fabrication to promote The Movement. From the start, this prophecy could never have been considered true.

リバイバルの預言

また、カンザスシティ・フェローシップによってリバイバルが来るという預言がありましたが、それも実現しませんでした。グルーエンは次のように語っています。6

カンザスシティ・フェローシップの創設から3年後に、カンザスシティで何千人、何万人もの人が救われる大リバイバルが起こるという大きな預言があった。この預言は広く喧伝され、人々は興奮し、多くの群衆が集まった。しかし、大リバイバルは起こらなかった。偽預言だったのである。

【原文を読む】

Then we had a big prophecy saying three years after Kansas City Fellowship began there would be a revival so great thousands and hundreds of thousands of people would be saved in Kansas City. It was trumpeted and proclaimed and people got excited and they got a crowd. But it didn’t happen. It was a false prophecy.

パット・ビックルのいやしの預言

リバイバルの預言には、マイク・ビックルの兄弟、パット・ビックルに関連する預言もありました。パット・ビックルは下半身不随でした。このパットについて、マイク・ビックルがミニストリーを始めるきっかけとなる預言を行ったオーガスティン・アルカラが、神によっていやされるという預言を行っていました。また同時に、パットがいやされる時に、リバイバルが来るとも預言していました。この預言については、カンザスシティの預言者を真の預言者として称賛した英国国教会の牧師、デイヴィッド・ピッチが1991年の著書で次のように詳しく記しています。7

1984年8月に、ボブ・ジョーンズがマイク(ビックル) のところにやってきた。 「ところで、あなたに預言があります。もうすぐ若い男が幻を見ます。その幻を聞くと、あなたは飛び上がって喜ぶでしょう。そして、彼にしがみついて離さないことでしょう」 どのような若者が、そのように飛び上がって自分を喜ばせるような幻をもたらしてくれるのだろうか思いつつ、マイクは喜びながら帰宅した。 家の中に入ると、電話が鳴った。オーガスティン(アルカラ)からだった。 「マイク、神は今夜、あなたの弟パット(ビックル)を訪れます。神はパットをいやすと示されるでしょう」 主は確かに夜中にパットを訪れてくださった。金曜日の午前4時3分のことだった。パットは目を覚ましていて、トランス状態の中で主が現れたようだった(使徒10:10参照)。パットは恐れた。 「わたしは来ました。十一年間、わたしはあなたに対処してこなかった」と主は言われた。 少し謎めいた感じがした。パットはトランス状態から抜け出し、まだ大きな恐れの中でベッドに横たわっていた。ただ、パットがいやされていないことは明らかだった。 その日の朝、パットはマイクに電話をして、その意味を尋ねた。パットがまだ電話をしている間に、(その朝パットに何が起こったかについて、主から直接聞いたことしか知らないはずの)オーガスティンが別の回線でマイクに電話してきた。… マイクが電話に出ないので、オーガスティンは次のようなメッセージを残していた。「昨夜のパットの訪問についてですが、使徒3章を見てください。エルサレムの町を開いた重要な奇跡は足の不自由な人のいやしでした。そして、使徒14章では別の足の不自由な人がいやされ、この2つの奇跡によって、福音がルステラに広まるための扉が開かれたのです。主はパットを呼び、パットをいやすと語られました。これがカンザスシティ全体に福音が届く鍵となります」

【原文を読む】

In August 1984 Bob Jones came up to Mike [Bickle]. ‘Oh, by the way, I have a prediction for you. A young man is going to have a vision very soon. It will lift you high off the ground. You will hold on to him and not let go!’ What young man could be going to have a vision that could cause Mike to leap up like that, he wondered. He went home rejoicing. Once in the house the phone rang. It was Agustine [Acala]. ‘Mike, God is going to visit your brother Pat [Bickle] tonight! He will show him that he will heal him!’ The Lord did indeed visit Pat during the night. It was at 4.03 a.m. on the Friday. Pat was wide awake when in what seemed like a trance (cf. Acts 10: 10) the Lord appeared and he was terrified. ‘I have come. For eleven years I have not dealt with you,’ said the Lord. It seemed slightly enigmatic. Pat came out of his trance and lay on his bed still in great fear. He had clearly not been healed. That morning he called Mike and asked him what it meant. Whilst Pat was still on the line, Agustine (who only knew directly from the Lord what had happened to Pat that morning) called Mike on another line… Unable to reach him, Agustine left a message: ‘Regarding Pat’s visitation last night, look at Acts 3 where you will see that the key miracle that opened up the city of Jerusalem was the healing of a cripple, and then at Acts 14 where another cripple was healed and this second miracle opened the door for the gospel to enter at Lystra. ‘The Lord has called Pat and told him that he is going to heal him and this will be the key for the gospel to the whole of Kansas City.’

しかし、パット・ビックルは結局いやされないまま、2007年5月に死去しました。アルカラの預言は成就しなかったのです。

偽預言者の見分け方

聖書には、偽預言者を見分ける方法がいくつか記されています。そのうちで重要なものが以下の2つです。

  1. 将来に起こることの預言が成就するか
  2. その人が語る内容が聖書と一致するか

上記のどちらに照らしても、カンザスシティの預言者は偽預言者であると言うことができます。

将来に起こることの預言が成就するか

旧約聖書の申命記18:21~22では、次のように言われています。

21  あなたが心の中で、「私たちは【主】が語られたのではないことばを、どのようにして知ることができるだろうか」と言うような場合、22  預言者が【主】の名によって語っても、そのことが起こらず、実現しないなら、それは【主】が語られたことばではない。その預言者が不遜にもそれを語ったのである。彼におびえることはない。 

この基準に照らせば、カンザスシティの預言者は偽預言者です。上記で紹介した以外にも、カンザスシティの預言者が語り、実現しなかったことが証明されている偽預言は数多くあります。何一つ成就していないと言う人もいます。旧約聖書によると、本来、預言者にセカンドチャンスはありません。一度でも主の名によって語って実現しなかったなら偽預言者確定です。上記の前の聖句で、次のように語られているためです(申命記18:20)。

20  ただし、預言者であっても、わたしが告げよと命じていないことを、不遜にもわたしの名によって告げたり、あるいは、ほかの神々の名によって告げたりする者がいるなら、その預言者は死ななければならない。

偽預言をしたら最後、その人は死刑に処せられるため、旧約聖書的には本来二度目のチャンスはないのです。この申命記の規定はモーセの律法の一部で、イスラエル民族ではなく、しかも恵みの時代に生きている私たちに直接適用されるわけではありませんが、預言者を見分ける基準としては今も有効です。

その人が語る内容が聖書と一致するか

偽預言者を見分けるもう一つの基準は、その人の語る内容が聖書と一致するかどうかを見ることです。その点でも、カンザスシティの預言者は基準に合格していないことが多くの関係者によって証言されています。カンザスシティ・フェローシップに吸収合併された「オラース教会」の教会員は、次のように証言しています。8

ある時、ジョン・ポールに夢について尋ねたことがあります。ジョン・ポールは、すべての夢は神からのものだと語りました。私は彼に、いつ賜物を受けたのか尋ねました。彼は、それは生まれた時からのもので、幼い頃に天使の訪問を受けて任命されたのだと言いました。これは、預言の賜物は聖霊からバプテスマを受けた時に受けるものだという聖書の教えに反しています。

【原文を読む】

On another occasion I asked John Paul about dreams. He said all dreams are from God. I asked him when he received his gifting. He said he received it from birth, and he was commissioned by an angelic visitation as a young child. This runs counter to Biblical teaching that prophecy is a gift from the Holy Spirit upon baptism.

そのほかにもカンザスシティ・フェローシップでは聖書に反することがいくつも教えられていますが、それについては後ほど紹介します。

偽預言者の教えに従うことの危険性

ここからは、偽預言者に従うことの危険性を見ていきたいと思います。

偽預言による実際的な被害

先述のアーニー・グルーエン牧師は、偽預言による被害について次のように語っています。9

残念ながら、この町で何かが起こると、それがいいとか悪いとかいう問題だけにとどまらず、人々が傷つくのです。私は、アガペ・ミニストリーズ(訳注:「預言」を信じて牧師がカンザスシティ・フェローシップに吸収合併されることを選択した教会)が閉鎖された時のことを思い浮かべています。そのうちの何人かは、現在私たちの教会にいます。多くの方が私の友人です。しかし、神のものでも、神から出たものでもない運動に巻き込まれ、人生を破壊され、台なしにされたために、教会に行かなくなってしまった人が、文字通り何百、何千人といるのです。

【原文を読む】

Unfortunately when something happens in the city, it isn’t just a matter of whether it’s nice or not; people get hurt. I’m thinking of Agape Ministries when that church closed. Some of those people are in our church now. A lot of those people are my friends. But there are literally hundreds and thousands of people who no longer go to church because they got into a movement that was not of God, not born of God, and now they are shipwrecked and ruined.

また、カンザスシティ・フェローシップに幻滅したメンバーや元メンバー百人以上にカウンセリングを行ったクリスチャンカウンセラーは、次のように証言しています。10

クライアントや私の知人の話では、与えられた預言が成就したことは一度もありません。……カンザスシティ・フェローシップの預言者や他の人物から預言されたというクライアントがいました。苦難の中にいる人にとって、成就しなかった預言は苦難を増し加え、神への不信を深めるものとなります。実際に、自殺願望のあるクライアントが、預言が成就されなかったことで、さらに自殺願望が強くなり、自殺未遂を起こしたこともあります。預言が成就しなかったのは自分のせいだと思い込むためです。

【原文を読む】

There has not been one prophecy fulfilled, as reported by clients or persons whom I know, when they were given a prophecy…I have had clients prophesied over by prophets and other persons at Kansas City Fellowship. To persons who are in a time of distress, prophecies which are then not fulfilled further add to their distress and distrust of God. Suicidal clients have, in fact, become more suicidal and even attempted suicide when the prophecies were not fulfilled, since the clients blame themselves for the lack of fulfilment.”

アーニー・グルーエンは、この証言に続いて次のように書き記しています。11

誰かに手を置いて「主はこう語られる」と言う時、私たちは人の人生を扱っていることを忘れてはならない。このような間違った預言によって、個人や家族が受ける苦悩、罪悪感、混乱、個人的な苦しみは計り知れない。

【原文を読む】

We need to remember that we are dealing with people’s lives here when someone lays hands on them and says “Thus saith the Lord!” We cannot begin to estimate the anguish, guilt, confusion, and personal suffering put upon individuals and families by these false prophecies.

正統的な信仰からの逸脱

偽預言者に従うことのもう一つの危険性は、正統的なキリスト教ではない異端的教えを信じるようになることです。マイク・ビックルや預言者の語るメッセージは、聖書を引用して組み立てるタイプのメッセージではなく、ほかの預言者や自分が受けたとされる預言や啓示が中心となります。そのため、聖書にはない奇異な教えが語られることが往々にしてあります。

たとえば、マイク・ビックルは、「Manifest Sons of God(顕現した神の子たち)」と呼ばれる異端的な教理を教えています。これは米国アセンブリー教団によって異端判定された「後の雨運動」で教えられていた教えです。IHOPの公式ホームページでは後の雨運動との関係を否定していますが、次のように明確に「Manifest Sons of God」の教理を教えた記録が残っており、発言を撤回する宣言も出ていません。12

神の意図しておられることは、私たちが神々のようになること、神の御子のようになることです。……神は心の中で、1つの民を地上で生きる神々のようにする計画を立てられました。神は心の中で、ご自身の御子、主イエスのように生きる子どもたちをもうけようとお考えになったのです。……私たちは、天上の神のいのちを地上で現す存在になるのです。このような子としての身分について持論を展開し、宣言すると、宗教的なコミュニティは反対して「冒涜だ!」と言います。それは人々がイエスに言ったことでもあります。宗教的な人々はこれをいつも異端と呼ぶのです。

【原文を読む】

God intends us to be like gods, he intends us to be like the Son of God. … God has conceived in His heart of a plan to make a race of men that would live like gods on the Earth. He has conceived in His heart to have Sons that would live like His Son, the Lord Jesus lived… That we were to be on earth the extension and manifestation of God’s life in heaven. …When a person comes up and declares what Sonship is about, the religious community comes up and says “blasphemy!” That’s what they did to Jesus. The religious mind will always call this heresy.

MEMO

「Manifest Sons of God(顕現した神の子たち)」の教理については、後の雨運動(2)「Manifest Sons of God」を参照してください。

福音が語られない

一方、あるKCF元メンバーの婦人は、イエスの十字架による救いを説く福音を聞いたことがないと証言し、次のように語っています。13

カンザスシティ・フェローシップでは、十字架のメッセージが語られていませんでした。主人はそのことについて何度かマイクと話そうとしましたが、受け入れてはくれませんでした。

【原文を読む】

The Message of the Cross was not being preached at Kansas City Fellowship. My husband tried to talk to Mike about it several times, but was not received well.

イエスの十字架を語らない教会はまともな教会とは言えません。イエスが私たちの罪のために十字架で死んでくださったというメッセージがキリスト教が語る福音の中心だからです(1コリント15:1~5)。

砂の上に建てた家

現在のIHOPにつながるマイク・ビックルの働きは、オーガスティン・アルカラの預言に始まっています。しかし、パット・ビックルのいやしに関するアルカラの預言は成就しませんでした。このことからわかるように、現代の預言者が語る預言は、現実の前にもろくも崩れ去る砂上の楼閣です。マタイ7:24~27でイエスは次のように語っています。

24 ですから、わたしのこれらのことばを聞いて、それを行う者はみな、岩の上に自分の家を建てた賢い人にたとえることができます。 25 雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家を襲っても、家は倒れませんでした。岩の上に土台が据えられていたからです。26 また、わたしのこれらのことばを聞いて、それを行わない者はみな、砂の上に自分の家を建てた愚かな人にたとえることができます。 27 雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまいました。しかもその倒れ方はひどいものでした。

カンザスシティ・フェローシップのメッセージは、イエスのことばを教え、実践するものではなく、神から直接受けた預言や啓示が中心になっています。それは主(イエス)からのものと主張していますが、将来に関する預言が実現していないことから、それがイエスから受けたものではないことは明白です。

上記の聖句の文脈にも注意する必要があります。この聖句は、偽預言者を見分けるという文脈の中で語られています。上記の数節前のマタイ7:15~20では、次のように言われています。

15 偽預言者たちに用心しなさい。彼らは羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、内側は貪欲な狼です。16 あなたがたは彼らを実によって見分けることになります。茨からぶどうが、あざみからいちじくが採れるでしょうか。17 良い木はみな良い実を結び、悪い木は悪い実を結びます。 18 良い木が悪い実を結ぶことはできず、また、悪い木が良い実を結ぶこともできません。 19 良い実を結ばない木はみな切り倒されて、火に投げ込まれます。20 こういうわけで、あなたがたは彼らを実によって見分けることになるのです。

先ほどのカウンセラーの証言を見ると、カンザスシティの預言者がよい実を付けているとは言いがたいことは明らかです。また、その後に続き、マタイ7:24~27につながるマタイ7:21~23では次のように言われています。

21 わたしに向かって『主よ、主よ』と言う者がみな天の御国に入るのではなく、天におられるわたしの父のみこころを行う者が入るのです。 22 その日には多くの者がわたしに言うでしょう。『主よ、主よ。私たちはあなたの名によって預言し、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって多くの奇跡を行ったではありませんか。』 23 しかし、わたしはそのとき、彼らにはっきりと言います。『わたしはおまえたちを全く知らない。不法を行う者たち、わたしから離れて行け。』 (強調筆者)

この聖句の太字の部分を見ると、主の御名によって預言していても、天の御国から排除される人がいることがわかります。そして、当然、そのような偽預言者に従う人々も、偽預言者と同じ道をたどる危険性があります。この一連の聖句は、現代の偽預言者が語る預言ではなく、イエスのみことばに立つ必要性を教えています。

この記事を書いた人:佐野剛史

サムネイル画像:Jonathan Baldwin – www.hungrygeneration.com

参考資料


  1. John Park, “The International House of Prayer (IHOP)” (CARM) [Sep 29, 2010] (https://carm.org/lhop/the-international-house-of-prayer-ihop/)

  2. “Session 2 Great Change and Revival Are Coming to the Church (2019)”, REMEMBERING OUR PROPHETIC HISTORY (2019) (https://backup.storage.sardius.media/file/akamaiBackup-ihopkc-103762/IHOP/573/707/Session%202%20Great%20Change%20and%20Revival%20Are%20Coming%20to%20the%20Church%20(2019).pdf)

  3. Ernest Gruen, “Documentation of The Aberrant Practices and Teachings of Kansas City Fellowship (Grace Ministries)”, p.12 (PDF版)

  4. 同上 p.41

  5. 同上 p.41

  6. Ernie Gruen, “False Prophets: Do We Keep Smiling and Say Nothing?” (2018) (Kindle版)

  7. David Pytches, “Some Said It Thundered: A Personal Encounter with The Kansas City Prophets,” (1990), pp. 102-103.

  8. Ernest Gruen, “Documentation of The Aberrant Practices and Teachings of Kansas City Fellowship (Grace Ministries)”, p.38 (PDF版)

  9. 同上 p.38

  10. 同上 p.12

  11. 同上 p.12

  12. Mike Bickle, “Glory and Dominion of Sonship, Part 2,” cassette tape, as cited by Bob Hunter, The Toronto Blessing. (http://letusreason.org/Latrain98.htm)

  13. Ernie Gruen, “False Prophets: Do We Keep Smiling and Say Nothing?” (2018) (Kindle版)