聖書信仰の見張り人たち

聖書信仰の見張り人たち

パッション訳聖書の訳者「私たちはイエス・キリストが受肉した者」

パッション訳聖書の訳者で新使徒運動(NAR)の「使徒」ブライアン・シモンズは、YouTubeにアップされている以下のメッセージで「クリスチャンはキリスト(つまり神)になる」とする異端的な教理を教えている。

MEMO

パッション訳(The Passion Translation)聖書は、聖書アプリ「YouVersion」にも収録されている英語訳聖書で、ビル・ジョンソン(ベテル教会、米国カリフォルニア州レディング)やチェ・アン(ハーベスト・ロック・チャーチ、米国カリフォルニア州パサデナ)など、新使徒運動の自称使徒たちが推薦している聖書だ。この聖書翻訳の正確性については多くの疑問が投げかけられており、NARの教えを正当化するような用語や訳を多数採用していることが指摘されている(Holy Pivec, “Bill Johnson, IHOP, and the ‘Passion Translation’“)。

出典:Brian Simmons, “Glory Of The Last Days, Session 2 Part 2”

このYouTube動画の冒頭で、シモンズは次のように語っている。

主は私たちのうちにおられます。黙示録12章の「処女の花嫁」は、人の子の集団(Man-Child company)を生みます。これは集団として表現されています。1人が多数となり、1粒の種が地に落ちて死にますが、現在は多くの種を実らせています。今では、多くの種となったキリストがいるのです。

【原文を読む】


He’s within us. The Revelation 12 Virgin Bride will give birth to a Man-Child company. a corporate expression, one has become the many, the seed has now fallen into the ground and died but is now bearing many seeds, there’s a many seeded Christ.

シモンズがここで何を語っているかを理解できる人はそう多くはないと思う。これは多くのNAR指導者が信奉する「Manifest Sons of God(神の子らの顕現)」と呼ばれる異端的な教えだ。「Manifest Sons of God」の教えで「人の子の集団(Man-Child company)」とは、終末時代に現れるクリスチャンのエリート集団のことを指す。このクリスチャンのエリート集団は、死ぬことがない栄光の体を受け、神のような存在になる。これが「Manifest Sons of God」の教理が教えていることの1つだ。

MEMO

このエリート集団を指導するのが使徒と預言者である。そのため、この教えは新使徒運動(NAR)と、その前身である「後の雨運動」の教えの重要な構成要素となっている。「Manifest Sons of God」の教えの詳細は、「後の雨運動(2)『Manifest Sons of God』」を参照いただきたい。

「Manifest Sons of God」を教える一部の指導者はさらに一歩踏み込み、キリストの再臨とは、キリストが物理的に地上に戻ってこられることではなく、キリストがクリスチャンの集団に「受肉」し、クリスチャンがキリストの一部になることであると教える。 シモンズのこのメッセージを続けて聞いていくと、シモンズが教えている内容はまさにこの「Manifest Sons of God」の教えであることがわかる。

私たちは再び人となった『ことば』です。私たちはイエス・キリストが受肉した者なのです。(1分36秒付近)

【原文を読む】


“We are the Word made flesh again. We are the Reincarnation of Jesus Christ.”

キリストはもはや人ではありません。キリストは人々です。あなたや私は、マリアのように神を身ごもっているのです。私たちがキリストを生むのです。キリストの再臨とは、主になることです。(4分31秒付近)

【原文を読む】


“Christ is no longer a man. He’s a people. You and I carry like Mary. We will bring forth the Christ. The Second Coming is the Becoming of the Lord.”

キリストが現れ、集団として地上に登場すると、キリストの足になる人々がいます。美しい足です。…その人々には、罪や、暗やみ、死さえも触れることができません。(5分55秒付近)

【原文を読む】


“As Christ comes forth and emerges on the earth in a corporate expression, there will be a people who become the feet. The beautiful feet. … They will be untouched by sin, darkness, even death.”

シモンズの教えは人を神とする教えであって、旧約聖書の時代であれば石打ちにされたかもしれない異端の教えだ。この点については自覚があるようで、シモンズは次のようにも語っている。

神は、神の性質を持った人を作られました。これはかなりクレイジーな考えです。この後で休憩を入れるかもしれません。というのは、この中に石を投げてくる人がいるかもしれないので…(9分10秒付近)

【原文を読む】


He made a God-kind man. Do you know, God, this is so crazy, I may want to take a break after this, ’cause some might want to throw stones…

このような人物が翻訳した聖書が市場を出回り、広く使われている聖書アプリに収録されていることは信じがたいことだが、これが今の教会で起きている現実だ。しかも、そのような人物が「使徒」を名乗っているのだ。

シモンズは次のようにも語っている。

聖書に関する伝統、意見、理解への愛着を捨てなさい。そのようなものは浅薄で、弱々しく、私たちの人生でほとんど実現できないものです。なぜなら、私たちは豊かな宝をまだ手にしていないからです。私たちは霊的生活の最も深い部分を解き放っていないのです……

【原文を読む】

“Stop being in love with your tradition, opinion and understanding of the Bible that’s so shallow, and so, like, feeble, and we barely make it in our lives because we don’t have that rich treasure yet. We’ve not unlocked the deepest places of spirit life…” (4分3秒)

シモンズがここで言う「豊かな宝」とは、おそらく使徒や預言者が語る新たな「啓示」を示唆していると思われる。新使徒運動に共通するのは「これまでの聖書理解や聖書の字義通りの解釈にこだわるのではなく、使徒や預言者が直接神から聞いた神のことばに耳を傾けなさい」という教えだ。聖書に照らせば、現代の「使徒」が教えていることは誤りであることが明らかだからだ。

しかし、聖書では次のように言われている。

みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。(2テモテ4:2)

今は「悪い時」かもしれないが、クリスチャンに対する神の命令は変わっていない。

参考資料